遺伝子編集治療は可能になっていくのか?

 

KCNT1の遺伝子変異は、1塩基が本来あるべきものから別の塩基に置換されたものです。

たった一つの塩基の違いが起こるだけで、こうも症状が出てしまうものだと驚くばかりです。

長男の場合は、ある場所の塩基がG(グアニン)からA(アデニン)に置換されています。

塩基3つで1つのアミノ酸が出来ます。

CGUだとアルギニン、CAUだとヒスチジンになり、1塩基が変化すると出来上がるアミノ酸が変わってしまう訳です。

その結果が難治性てんかん・・・

原因がこれであるのであれば、この1塩基をAGに戻せればいいのではないか?と短絡的に考えたくなります。

この遺伝子編集という技術、実は既に存在して、2020年のノーベル化学賞を受賞されています。

Emmanuelle Charpentier
Max Planck Unit for the Science of Pathogens, Berlin, Germany

Jennifer A. Doudna
University of California, Berkeley, USA

のお二人です。

 

遺伝子編集というものをヒトに応用してよいものなのか?

遺伝子をいじることが倫理面で問題ないのか?

有害事象は起きないのか?

遺伝子編集の薬剤を入れる時には起きたままで鎮静不要?

などなど、確認したくなることは様々出てきます。

が、もしもこれが実現可能であれば、難治性てんかんの原因を除くことにつながるので、根本的治療となるのではと大いに期待するところです

実はヒトに対しての臨床試験が始まっていることを知りました。

https://www.nature.com/articles/s41587-022-01445-5

PCSK9遺伝子の変異によって高コレステロール血症が起こることが知られていて、E32K変異ですので、アミノ酸としてはE(グルタミン酸)がK(リジン)に変わってしまっているものになります。

 

脳神経の場合には投与するものが脳血流関門(blood brain barrier)を通過するかどうかの確認も必要になるのでしょうが、1塩基の置換という遺伝子異常で起こる様々な疾患に悩む患者・家族にとって、この臨床試験がどのように進むのかは大きな希望をもたらすのではないでしょうか。

この臨床試験の経過を注意深くフォローしてみたいと思います。